「しょうがない」「しかたがない」が口癖の人の心理
「しょうがない」「しかたがない」は、自分を慰めるとき、人をけなすとき、それから照れ隠しのときに使われる言葉です。
- 「今あなたに説明してもしょうがないから言わない」とか、
- 「初めから無理があったスケジュールだから、質が落ちるのもしょうがないよね」
- 「俺しか頼る人がいない?しょうがないなあ」
おそらくいちばん耳にする機会が多いのは、2番目ではないでしょうか。自分自身への慰め、失敗したときの自分自身への言い訳です。このような使い方を心理学では「セルフ・ハンディキャッピング」といいます。
セルフ・ハンディキャッピングは、不利な状況を自ら作りだす、自信がないことを口にする、環境のせいにする、自分の殻に閉じこもってしまう、といった行動に表れます。
ある課題に取り組む際、その結果の評価を曖昧にするために、自分であえて障害を用意している(ハードルを上げている)のです。本当に自信がない場合だけでなく、戦略的に使う場合もあります。
自分を守るために使われるセルフ・ハンディキャッピングの例
セルフ・ハンディキャッピングには以下のような例があります。
不利な状況を自らつくり出す
- 達成できそうもない難しいことを引き受ける。
- あえて制約の厳しい条件を受け入れる。
- 他人から見て不可解な目標を設定する。
自分の心の問題をあえて口にする
- 「今月の売上目標が高すぎて達成できそうにないんだよね…」
- 「今日はちょっと体調が悪いから記録が伸びないかも…」
- 「なんだか今日はやる気がでないなあ…」
環境のせいにする
- 「この仕事はちょっとスケジュールに無理があるよね」
- 「今の設備じゃ対応するのは厳しいかなあ」
- 「この給料じゃあ、いい仕事ができないよね」
- 「こんなに頑張ってるのに会社に評価されなくて……」
自分の心の中に閉じこもる
- お酒や薬物の力を借りて、あえてパフォーマンスを下げる
- 努力を怠る。やればできる、やらなかっただけということにする
- 忘れたふりをする。できなかったのではなく、忘れていただけということにする
重圧に耐えられないからこそハードルを上げる
何かをするとき、達成する自信がない場合、あえてハードルを上げようとする人がいます。
あらかじめ予防線を張っておけば、結果が悪くても「そりゃあ無理だよね」受け入れやすくなりますし、結果が良ければ「まさか達成できるなんて!」と周囲の評価も上がり、自慢できます。
事前にハードルを上げることで心理的なプレッシャーも弱まってリラックスして取り組むことができるでしょう。
しかし、良いことばかりではありません。どう見ても実現できそうなのに「無理かも……」「勉強してない……」などと言っていては周囲の人間からの評判は落ちてしまいます。気が弱い、覚悟が足りない、情けない人という印象を持たれてしまうでしょう。初めからやる気がないとアピールしまくるのも考えものです。
試験当日に「全然勉強していない」と言っておいて、90点以上の高得点を叩き出したら、友人はどう思うでしょうか?非現実的な売上目標を掲げていたのにあっさり達成したら、「何か裏があったのでは……」と疑われるかもしれません。
自分に適した目標設定を
目標は高いほうが頑張れるという人もいれば、手が届きそうな範囲に設定することでやる気が出る人もいます。
高すぎる目標を立てた場合、途中で息切れしてしまったり、内心は「できなくてもしょうがない」と思いながら取り組むと、なかなか本気になることはできません。逆に、弱気になって簡単な目標設定をしてしまうといつまでも成長できません。
本当に達成したい目標があるのであれば、セルフ・ハンディキャッピングをしないように自分を仕向ける必要があります。
そのためには、やる気(モチベーション)に左右されないようにしなければいけません。やる気があってもなくても、自信があってもなくても、淡々と日々取り組めるような仕組みづくり、つまり習慣化です。
自分の行動の癖を把握し、平常心で取り組めるようなシステムを考えてみましょう。いざやりはじめたときに、セルフ・ハンディキャッピングの例にあるようなセリフが出てしまったら、それは軌道修正が必要だというサインです。