プライベートな話で心を開くと相手を信頼してしまう理由

商談や打ち合わせなどで相手が自分に対して心を開いていないと感じるとき、状況を変えるにはどうしたら良いでしょうか?

そんなときに使えるテクニックとして、趣味などのプライベートな話題を持ち出すというものがあります。人間は、親しみやすい話題の後に交渉を持ちかけられると、前向きに聞いてくれることが多いのです。

バカバカしいと感じるかもしれませんが、事実そのような傾向があります。この「プライベート話作戦」は知ってか知らずか多くの人が取り入れている鉄板パターンなのです。

自分から気分が良くなるのがプライベートな話題

ニューヨーク大学の心理学者グレーニー・フィッツサイモンズ氏が興味深い実験を行っています。

空港の待合所に1人でいる人たちを対象として、プライベートな話が持つ効果を検証したのです。彼は、自分が心理学についての調査をしていることを明かした上で次のような質問をしました。

まず、半分の人には「あなたはどんな友だちがいますか?」と質問し、残り半分の人には「あなたにはどんな同僚がいますか?」と質問しました。

実験の対象となった人たちは、それぞれ質問された、友だちのこと、同僚のことを話してくれました。

その後、質問した全員に「他にも少し時間のかかる質問がありますが、協力してくれますか?」と訪ねたところ、友だちについて質問された人たちは次の質問に50%以上が協力してくれたのに対して、同僚について質問された人たちは2割しか協力してくれなかったのです。

「気分がいい」と誰もが協力的になってしまう

この実験により、友だちについて質問された人たちは、同僚について質問された人たちよりも気分よく話すことができ、その後の依頼に対して快く協力する傾向があるということがわかりました。

実験をする側が面白い話をして和ませたわけではなく、対象者が自分から友だちの話をして(要求されたとはいえ)気分が良くなり、そのおかげでさらに実験に協力してくれるのですから、非常に協力な心理効果です。

交渉ごとを進める上で、一見関係ないように思える話でも、相手の機嫌や反応に大きく影響していることをこの実験は示しています。まずは相手が気分良くなるように仕向けること。これでだけでも交渉の難易度は随分下がります。

少し話すだけで効果がある

販売職や営業職で成績が優秀な人は、他愛もない話を先にしておき相手がいい気分になってから商談に持ち込む…というテクニックを良く使います。

いい気分、というのは「褒められて有頂天になる」ほど大げさなものではありません。「友だちの話か同僚の話か」ぐらいの違いです。

無理をして100点満点を狙う必要はありません。プライベートな話をちょっと挟むだけで人間の心持ちは大きく変わります(こちらの要望に応えるかどうかという意味で)。「気分がいい」までいかなくても、「悪くない」までいけば、はじめの0よりもかなり期待できる状況まできているはずです。

これは同じチーム内での協力体制を整える意味でも大いに役に立つでしょう。頑固で融通が利かない人や、奥手で引っ込み思案な人が相手でも、共通して使えるテクニックです。