人を外見で判断してしまう心理

「人を外見で判断してはいけない」と言われています。一般的な倫理観としてはそうかもしれません。

しかし実際には、外見(視覚から得られる情報)は人間がものごとを判断するうえで大きな要素の1つであり、その人の印象を決めるときも外見が大きくモノを言います。“人は見た目が9割”というのもあながち間違いではありません。

道徳倫理的な問題はさておき、事実として人は外見でものを判断してしまう傾向にあることは覚えておいたほうが良いでしょう。

綺麗なスーツと汚いスーツのビジネスマンではどっちが選ばれる?

人は見た目が9割

例えば、あなたの会社に競合する2社の営業マンが商品サンプルを持ってきたとします。1人はピシッとしたスーツ姿で髪型も決まって清潔感もある、もう1人はヨレヨレのスーツで髪はボサボサで無精ヒゲを生やして不潔そうな雰囲気でした。

さて、あなたはどちらの営業マンに好感を抱き、話を聞いてみようと思いますか?多くの人はピシッとしたスーツの営業マンを選ぶのではないでしょうか。

清潔なスーツ姿の人は、それだけ好感が持てるし、紹介してくる商品まで優れているように思えてきます。一方、ヨレヨレのスーツの人の場合は、「大丈夫かな…」と不安になります。

つまり、最初のパッと見である勝負がついてしまっているのです。客の立場として考えれば当然のことですよね。しかし、売る側に立つと意外とこうした基本的なことができていない人が多いのです。

あまりにもきちんとしていると逆に怪しいのでは?と思うかもしれませんが、かといって汚い格好のほうが良いとはならないはずです。不潔な印象を持たれる格好ではスタート地点に立つことすらできません。

毎日多くの人と接するビジネスマンにとって、外見を整えることがいかに重要かがわかるでしょう。

地位や肩書きにも左右される

心理学的な考え方では、地位や肩書きも「外見」のひとつとされます。

例えば、職業が弁護士、医師、教師と聞くと、それだけ相手は真面目な人格者だと思い込んでしまう人は少なくありません。名刺に部長や課長といった肩書きがあると、それだけでかしこまってしまいます。ましてや自分より肩書きが上だとなると益々萎縮してしまうでしょう。

実際には、金に汚いどぐざれ弁護士もいれば、いい加減なヤブ医師、自制心のないセクハラ教師もます。肩書きが専務だとしても2代目のバカ息子が形だけ役職を与えられていることだってあります。

「そんなことはわかっているよ」と思うかもしれませんが、相手のことをよく知らない初対面の場面では、やはり地位や肩書きは相手を判断する上で重要な材料であることに変わりはありません。

自分がその業界について詳しくなかったら?今すぐ決めなければいけないときにアドバイスを求める相手は?

なんだかんだで見た目や肩書の持つパワーは侮れないものです。このような効果を心理学ではハロー効果といいます。

ハロー効果の良い例と悪い例

「ハロー」とは、「後光が差す」というときの「後光」のことです。ポジティブな方向に認知されるのはポジティブ・ハロー効果、反対に悪く感じてしまうネガティブ・ハロー効果があります。

ポジティブなハロー効果

  • いつもあいさつしてくれる社員を「勤務態度が真面目」と判断してしまう(あいさつが元気なだけ)
  • 有名大学を卒業しているだけで、優秀な人材と評価してしまう(実際は成績最下位)
  • 外資系の企業に勤めているから、外国人の友だちが多いと思ってしまう(配属先にほとんど外国人がおらず、友だち付き合いも苦手)

ネガティブなハロー効果

  • 営業成績が悪い社員を、「いつも遊んでいる」と判断する(オンオフの切り替え上手かも)
  • 高卒というだけで、仕事ができても評価しようとしない(実際に出した仕事の結果と学歴は無関係)
  • ゆとり世代と聞くと、常識がなく自分勝手な人だと判断する(勝手なイメージ)
  • 仲が悪くトラブルの多い職場は、商品もイマイチに感じてしまう(雰囲が悪くても商品が良いことはある)

人の判断は思いのほかあてにならない

人が人に対して持つ印象というのはいい加減なものです。

しかし、最初に植えつけられたイメージはなかなか変わりません。

身分不相応な印象操作をして相手を騙すのはよくありませんが、少なくとも悪い印象を抱かせない工夫はしておくべきでしょう。