人任せにして手抜きをしてしまう心理

人任せにしてしまう人の心理

どうせ誰かがやるから自分は頑張らなくてもいいや……

大人数でいるとき、つい手抜きをしてしまう人がいます。あなたはそんな人を見て、「怠け者だ!サボるのは良くない!」と思うでしょうか?

実は、集団の中にいるときに手抜きをしてしまうのは人間であれば誰でも持っている性質です。本人は本気でやっているつもりでも、無意識のうちに手を抜いてしまうのです。あなたも例外ではありません。

意見があるのに言わないのはなぜ?

大人数が集まる会議では、発言する人はいつも決まって同じ人ではないでしょうか。声の大きな人の意見が通り、その他大勢は黙って従うのみ。特別深刻な不満がない限りは反対意見も出ずにどんどん進行していく。会社の会議でも、PTAでも町内会の集まりでも、だいたいは似たようなものだと思います。

もちろん、黙ってうつむいている人に意見がないわけではありません。ただ、大人数のときは積極的ではないというだけの話です。そういう人たちの中には、少人数でのミーティングのときには活発に意見を戦わせる人も多くいます。

では、なぜ大人数を前にすると無口になってしまうのでしょうか?

集団が大きくなるほど、人は手を抜いてしまう

「必要以上に注目されたくない」「恥ずかしい」という気持ちもあるでしょう。しかしそれだけではありません。

「ほかの誰かが発言するだろうから自分はいいや」という心理が働いているのです。しかも無意識のうちに。

人は、集団で行動したり作業をするとき、無意識のうちに手抜きをしてしまうことがわかっています。集団が大きくなればなるほど、「他の誰かがやるからいい」と考えて、1人が発揮する力は弱くなります。

これを、社会的手抜き、またはリンゲルマン効果といいます。

心理学者リンゲルマンが行なった実験

何人かのグループでロープを引っ張り、1人で引っ張るときと比べて力の入れ具合がどう変わるかを調べました。1人で引っ張ったときの力を100%とすると、以下のように変化しました。

  • 1人 100%
  • 2人 93%
  • 3人 85%
  • 8人 49%

グループの人数が増えれば増えるほど1人のメンバーが出す力は弱くなり、8人では1人ときの半分の力も出していないことがわかりました。

ロープを引く代わりに、グループで「大声を出す」「大きな音で拍手する」といった行動をさせた場合でも結果はほとんど同じでした。グループの人数が増えるほど1人のメンバーが出す声や拍手の音量は小さくなりました。

手抜きをしない人数は何人から?

例えば、重い荷物を2人で運ぶときにどちらかが手を抜けば、もう1人に負荷が掛かり過ぎてバランスを崩してしまいます。それが無意識のうちに理解できているので、お互いに頑張って荷物を運びます。

ところが、10人で運ぶとなると、自分以外に9人もいるのだから、「自分が頑張らなくても何とかなるでだろう」というズルい計算が働きます。年末の大掃除のときなど、ワイワイ騒ぐだけで大して働いかない人は、こうした計算を無意識的にしているのです。

「みんなで力を合わせて頑張ろう!」などと調子の良いことを言っていても、皮肉なことに深層心理では誰もそんなことを思っていません。人数が増えれば増えるほど作業効率は下がる一方だったりします。

できれば2、3人、多くても4人でグループを構成するのが好ましいでしょう。

責任の所在をはっきりさせる

人数ばかり多くていっこうに効率が上がらない…という事態を避けるためには、グループを少人数にして責任の所在を明確にする必要があります。

例えば、2人グループであればそうそう手抜きはできません。自分がやらなければ、もう1人にばれてしまうからです。2名ごとに担当部門を課し、責任をもたせれば、効率よく作業を進めることができます。

1つのグループの中にさらに2人の小グループを、そのまたさらに2人で……実際はそこまでうまくいかないでしょうが、できるだけ単位を2人にして責任を分担するというのが理想です。