小さなことが気になる神経質な人の心理
いつも小さなことが気になってしまい、周囲から神経質だと思われる人はどこにでもいます。しかし、この心理が非常に強く、それに伴う行動が頻繁に現れる人の場合は、強迫性障害の可能性があります。
例としては、家を出た後に「あれ?鍵かけたっけ?」と気になってしまう。そして、家に戻って確認しないと気がすまない。仕事や予定に遅れることがわかっていても戻ってしまう、というものです。
強迫性障害(OCD: Obsessive Compulsive Disoredr)とは、不安障害に分類される病気の1つ。症状は、不安が繰り返し心の中にやってきて苦痛を強く感じること(強迫観念)。そして、その不安な気持ちを打ち消すために何らかの行動(強迫行為)。この2つがセットになっている場合、強迫性障害と診断されます。
強迫性障害は世界でも人口の2%程度いると言われています。50人に1人の割合ですから、クラスに1人いてもおかしくない割合です。原因は脳の中で作られる神経伝達物質セロトニン(不安を鎮めたりする物質)が影響していると考えられています。
「気にし過ぎ」を改善する方法は?
自分は強迫性障害なんじゃないかと思っている人の多くは、実はなんでもないことも多いです。人口の2%なのですから、無理もありません。
かといって、病気の可能性が極めて低いとはいえ、単なる「気にし過ぎ」の人が生きにくいと感じているのもまた事実。
単なる「気にし過ぎ」を改善する方法は、スケールを極端に大きくしたり小さくしたりして考えること。もうひとつはそれ自体を長所として活かしていくことです。
物理的、時間的スケールを巨大化して考える
漫画などでよくある表現ですが、宇宙規模でものごとを考えるのはけっこう有効です。
人類誕生が約1億年前、地球が生まれて46億年以上、宇宙の歴史はもっと長いわけです。それに比べればひとりの人間の一生なんてほんの一瞬。
あなたが気にしていることは、本当に些細なことです。もし仮に失敗したり、うまくいかなかったとしても、大したことはありません。
逆に、小さい方で考えると、菌類や細胞、分子や原子レベルまでいくとよく知ると良いでしょう
潔癖症の人はバイ菌が汚いと思っているようですが、目に見えない菌はそこらじゅうにいっぱいいることを忘れてはいけません。あなたの顔にも目に見えないほど小さなダニが住んでいます。
そして、それらの菌類と我々は共生しています。何も問題ありません。菌にも良い菌がいるのです。
アルコール除菌で、いったいどれほどの菌が死滅しているか目で確認できますか?できませんよね?
気になってしょうがない。強迫観念の種類
潔癖症。不潔なものに対する不安
汚いもの不衛生と感じるものに対する不安から、過剰に洗浄を繰り返してしまう。
外出先から戻ると、すぐにシャワーを浴び、衣服を全部着替えないと気が済まない、ドアノブやトイレの便座を除菌したい、素足で家の中を歩きたくない、布団のホコリ、ペットの毛……
家族以外が作った料理が食べられない、人が素手で触ったおにぎりが食べられない。スーパーで買った商品を家で過剰に洗う。など。
対処法:菌のことを勉強してみましょう
潔癖症ぎみの人に限って、菌に対して偏見を持っていたりします。
口の中にいる細菌の種類は、トイレの便座よりもはるかに多いです。スマホも同様に汚いです。
極端ですが、人間とキスするよりも便座に口をつけるほうがまだマシなのです。スマホを触った手を洗わずに人と握手したりご飯を食べるのも不潔です。
菌には良い菌もおり、人間が健康に生きるために欠かせないものも多くいます。(大腸菌やO-157など危険なものもいますが)
ですから、むしろ免疫をつけるために多少テキトーに暮らしていたほうが良いのです。
危険、不都合を過剰に回避しようとする
強迫的な状況を引き起こす行動を避けるようになる。鍵をかけたかどうか不安になってしまう人は、そのような心配ごとを未然に防ぐために「そもそも家を出なければ良いのだ」と考え、最悪の場合は引きこもりになってしまうこともあります。
対処法:ルーティンの徹底
「ルーティンを徹底すること」を心がけると良いでしょう。複雑な作業は細分化して要所要所をひとまとまりの行動として機械的に行うようにします。
「家を出たら、まず鍵をかける」「朝起きたら、窓を開けて歯を磨く」「メールが来たら即返信」
このような単純なセットの行動を甘く見ている人が多いように思います。人間は意外と単純で複雑な工程をこなすことができません。ルーティンを作らないせいで、頭の中で処理しなければいけいないことが増え、そのことで頭の中がいっぱいになり不安を招く、というのはよくある失敗パターンです。
正確さ・順序に対する拘り
家具・リモコンなどが定位置でないと気が済まない。モノの位置は必ず左右対称、垂直に並んでいないと気が済まないなど。
対処法:長所として活かす
几帳面な性格は、建築やモノづくりなどの仕事では好まれるため、努力すれば活躍できる可能性があります。
直線とか水平というのは虚構の産物であり、本当に完璧な直線とか水平というものは存在しないので、ある程度割り切って考える必要があるでしょう。
「ある」と思っているからこだわってしまうのであって、「ない」と認識できれば、少しは気楽に付き合っていけるのではないでしょうか。
強迫性障害の可能性があるケース
多くの人は、よほどのことがない限り「まあ、いいか。多分大丈夫だろう。」と一旦保留することができます。仕事を優先させたり、臨機応変に対処します。
しかし、強迫性障害の症状が強い人の場合は、家に戻らずにはいられません。本人も「ちょっと気にし過ぎかな」と思っていてもやめられないほど強い衝動が襲ってくるのです。
ひどくなると、家を出られなくなったり、日常生活に支障をきたすようになります。
強迫性障害は治療できる
強迫性障害の治療の研究は日々進んでおり、薬物治療などにより日常生活に支障のないレベルまで回復している例も数多くあります。
心配な場合、まずは心療内科や精神科へ行って診断を受けることをおすすめします。
心療内科や精神科を受診することに抵抗を感じる人は多いようです。犯罪者にでもなったよう気分になるのでしょうか。社会から落ちこぼれてしまったような、そんな気になってしまうのでしょうか?
でも安心してください。それは勘違いです。何も恥ずかしいことではありません。
私の個人的な経験から言わせてもらうと、心療内科や精神科の病院はどこも綺麗で落ち着きますし、スタッフのみなさんも優しいです。待合室の患者さんたちもパッと見では元気な人たちが多いように思います。ですから、病院に行ってちょっと暗い気持ちになったりするようなことはありません。