他人の不幸を喜んでしまう、妬みが快感に変わる心理
「人の不幸は蜜(みつ)の味」という言葉があります。最近では、「メシウマ(他人の不幸で今日も飯が美味い、の略)」という言い方をしたりもします。
他人が不幸な目に遭うと、特にそれが自分のせいではない場合、人は喜びを感じてしまうのです。
心理学的にはこれをシャーデンフロイデといいます。
道徳倫理的には良くないと思いつつも、人間であれば誰しも抱いていしまうこの感情。なぜでしょうか?
実は、この感情は人間が生きていくために必要なものとして備わっている、健全な心理です。
他人の不幸が嬉しいのは、ヒトの進化に秘密がある
ヒトは、社会的な動物であり、一人では生きていくことができません。
生きていくということは、身体が成熟するまで生き延びて異性と出会い、子孫を残すということです。
ヒトが持っている身体的特徴や感情・心理のすべては、子孫を残すという目的を達成するために備わっています。
生きていくため、集団の維持に必要な感情
ヒトはとても弱いので一人でいると獣たちに殺される可能性がとても高いです。そのため、外敵から身を守りつつ食料を得て、異性に出会うためには集団で生活していたほうが都合が良い、ということになります。
ヒトが持つあらゆる感情は、生きていくために必要なものであり、その中に無駄な感情というものはありません。
よって「他人の不幸が嬉しい」という感情も必要なものなのです。そしてこれはもっぱら集団の維持に必要な感情であると考えられています。
集団行動ができないやつがいると困る
集団を作っていないと人は生きていられません。誰しもが必ずなんらかの集団に所属し、そこから生み出される利益の分け前をもらって生きています。
能力の違いによって貢献度に差はあっても、みんな何かしらの作業をして協力しています。それは近代の先進国であっても代わりません。
もし、集団の中にものすごく自分勝手なやつがいたらどうでしょうか?
狩りもしない、農作業もしない、会議にも参加しない。集団に一切貢献しないやつがいる。
だけど、分け前は貰おうとする。
それでは困りますよね?働きもしないでご飯を食べようとする人が増えると人間は絶滅してしまいます。
ですから、なんとかして集団に貢献してもらおうとはたらきかけないといけません。そのために必要な感情のスイッチが妬み(ねたみ)ということなのです。
怠け者を注意する人が必要
「ちょっと、あなたちゃんと働きなさいよ。このままじゃ私達は絶滅してしまうじゃない」
このセリフを言うために、妬みの感情が必要なのです。
でも、なぜわざわざ妬みの感情を抱かないといけないのでしょうか?
注意する人が嫌な気持ちになるのは、損をしているような感じがします。
注意・バッシングは快感である
実は、注意する人は快感を得ています。妬み自体はちょっと複雑な感情ですが、その感情から生まれる注意・バッシングをする行動は快感なのです。
これは人間の脳に備わっている機能です。集団を維持するために必要な行動には快感が伴っていないといけない。そうしないと誰も動かなくなってしまうからです。
子孫を残すための生殖活動がとても気持ち良いのも、ご飯を食べるのがとても楽しいのも、睡眠が心地よいのも、すべてこれと同じメカニズムです。
危険を犯してでも注意する必要がある
怠け者に対して注意をすると、逆ギレされる恐れがあります。
「なんでお前にそんなことを言われなきゃいけないんだ!」といって殴りかかってくるかもしれません。
でも、それにビビっていては自分たちは餓死してしまうかもしれない。危険を犯してでも注意する強い動機づけが必要になります。
そのために、脳は快感物質を出してわざわざ怠け者に制裁を加える行動を促すのです。
一般人の攻撃性。SNSの炎上、有名人へのバッシングが起きやすい理由
妬みの感情と注意・バッシングが人間の生存戦略上で必要なものであることはわかりました。
さらにすごいのは、自分には害が及ばないところから他人を攻撃するのはリスクはないのに快感を得られるので、もっと強力だというところです。
不祥事を起こした会社役員、不倫や犯罪を起こした有名人がテレビで叩かれていたりすると世間は大変盛り上がります。そして、インターネットのSNSなどで、一般人が寄って集って攻撃を始める。攻撃をしても反撃される可能性はとても低いので、ついみんな手を出してしまうのです。
また、不祥事だけでなく、「みんなからズレた行動をしている」というだけで、妬み→バッシングのスイッチは入ってしまいます。
出る杭は打たれる原因は、このような人間心理によるところも大きいのです。
妬みは悪くない。前向きに活かすべき
他人の不幸を喜んでしまうのも、注意・バッシングが快感なのも、人間にとって必要な機能です。
もし世の中の全員が非常におおらかで寛大だと、好き勝手に行動する人間が許されて秩序がなくなり、あっという間に絶滅してしまうでしょう。
人を妬んだりしても、「自分はなんて性格が悪い人間だ……」と落ち込む必要はありません。その感情を活かして「あいつに負けないように頑張ろう」と前向きに行動していくことが大切なのです。